個人事業主が初めて人を雇うとき、何を・どの順でやるか|届出から給与計算まで【保存版】

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ひとりで回していた事業に、初めて人を雇う。売上が伸びて「猫の手も借りたい」となったとき、多くの人がぶつかるのが「雇うと、何をどの順でやればいいのか分からない」という壁です。私も同じでした。

正直に告白すると、私は最初、給与計算を自己流のExcelでやっていて、計算式が壊れたことに気づかず、実際に働いた時間より多い給与を払ってしまったことがあります。お金の損失もですが、あとで「先月ちょっと多かったので調整させてください」と伝えるのは、従業員との信頼にヒビが入る、本当に気まずい瞬間でした。

この記事は、そんな失敗をしないための「初めて人を雇う個人事業主が、何を・どこに・いつまでにやるか」の順序立てた保存版ロードマップです。届出の手続きから、毎月回す勤怠・給与・有給まで、実体験を交えて通しで解説します。

ぴよぴよ
人を雇うって、届出とかすごく大変そう…
センパイセンパイ
正直、ひとりのときより事務は一段重くなる。でも『順番』さえ分かれば怖くない。①雇う前の準備→②届出ラッシュ→③毎月のサイクル、の3層で考えると一気に整理できるよ

STEP 0:雇う前に決めておくこと

手続きの前に、土台を固めます。ここが曖昧だと後で必ずもめます。

「業務委託」か「雇用」かをはっきりさせる
… 時間や場所を拘束し、指揮命令して働いてもらうなら「雇用」。単発で成果物を頼むだけなら「業務委託」(外注の始め方はこちら)。ここを曖昧にすると、社会保険や労災の扱いでトラブルになります
労働条件を決めて「労働条件通知書」を渡す
… 賃金・労働時間・休日・契約期間・仕事内容を明示。書面(または本人が希望すれば電子)で交付が義務です
地域の最低賃金を確認
… 時給がこれを下回るのはNG。毎年10月ごろ改定されます

STEP 1:届出ラッシュ(順序と期限の早見表)

人を雇うと、税務署・労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所への届出が一気に発生します。まず全体像を早見表で。

提出先 何を いつまで(目安) 対象・ポイント
税務署 給与支払事務所等の開設届出書 給与を払い始めて1ヶ月以内 これで源泉徴収がスタート
税務署 源泉所得税の納期の特例の申請 随時(任意) 常時10人未満なら源泉税を年2回納付にできる
労基署 労働保険 保険関係成立届 ほか 雇った日の翌日から10日以内 労災は1人でも必須・全額事業主負担
ハローワーク 雇用保険 適用事業所設置届+資格取得届 設置は10日以内/取得は翌月10日 週20時間以上&31日以上雇う見込みの人
年金事務所 社会保険 新規適用届+資格取得届 5日以内 個人事業は原則「5人以上」で強制加入

① 税務署:源泉徴収のスタート地点

給与を払う立場になったら、まず給与支払事務所等の開設届。あわせて源泉所得税の納期の特例を出しておくと、毎月納めるべき源泉税を年2回(7月・翌1月)にまとめて納付できて、事務がぐっとラクになります(従業員が常時10人未満の場合)。

② 労働保険(労災+雇用保険):1人でも必須

ここが見落とされがち。労災保険は、パート・アルバイトも含めて1人でも雇ったら加入必須で、保険料は全額事業主負担(給与から天引きしません)。労基署に保険関係成立届を出し、概算保険料を申告します。

③ 雇用保険:ハローワークで

週20時間以上、かつ31日以上雇う見込みの人は雇用保険の対象です。ハローワークで事業所の設置届と、本人ごとの資格取得届を出します。雇用保険料は労使で分担(事業主が多めに負担)。

④ 社会保険(健康保険・厚生年金):5人がライン

ここが1人目を雇うときの一番の分かれ目です。個人事業所は、常時5人以上を雇うと社会保険が強制適用(一部の業種は5人以上でも任意)。逆に5人未満なら、従業員は今まで通り国民健康保険・国民年金のままでOKで、事業主が社保の手続きをする必要はありません。強制適用になったら、年金事務所へ新規適用届と資格取得届を出します。

ぴよぴよ
うち、雇うのは1人だけ。社会保険はどうなるの?
センパイセンパイ
個人事業で4人以下なら、社保は強制じゃない。その従業員さんは国保・国民年金を自分で続ける形。だから1人目・少人数のうちは、①〜③(税務署・労災・雇用保険)が中心になるよ

STEP 2:毎月回すサイクル ― 勤怠 → 給与 → 有給

届出が済んだら、ここからが本番。毎月、勤怠を集計し、給与を計算し、有給を管理する——この3つが回り続けます。私がやらかしたのも、まさにこの部分です。

勤怠管理:まず「正確な労働時間」を押さえる

給与の全ての土台が、勤怠(何時間働いたか)です。ここが不正確だと、その先の給与も税金も全部ズレます。私は最初これを手入力のExcelでやっていて、月をまたいだ集計式が壊れているのに気づかず、時間を多くカウント→払いすぎという事故を起こしました。

正直、打刻と集計は最初から専用ツールに任せるべきだったと後悔しています。今は0円から使えるクラウド勤怠管理もあり、スマホやタブレットで打刻→自動集計まで完結します。人数が少ないうちほど、こういう仕組みで「計算ミスの芽」を消しておくのがおすすめです。

給与計算:総支給から「引くもの」を正しく引く

給与計算は、ざっくり「総支給額」から各種を差し引いて「手取り(差引支給額)」を出す作業です。引く項目はこれ。

源泉所得税
(全員)
住民税
(特別徴収の場合。前年所得にもとづき自治体から通知)
雇用保険料
(対象者)
健康保険料・厚生年金保険料
(社会保険の適用事業所の場合。40歳以上は介護保険料も)

ポイントは、5人未満で社会保険に入っていない場合、健康保険料・厚生年金の天引きは無いこと。でも源泉所得税・雇用保険料・住民税は引く——この線引きを間違えると、私のように事故ります。

だからこそ、給与計算は給与ソフトに任せるのが安全です。勤怠データを取り込めば、税額・保険料の計算から給与明細の作成まで自動。手計算・自己流Excelの「式が壊れる」リスクを根本からなくせます。会計ソフトとセットで整えておくと、確定申告や年末調整まで一本でつながります(会計ソフトの選び方はこちら/お金の年間カレンダー)。

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有給管理:付与ルールと「年5日」の義務

意外と抜けるのが有給休暇です。基本ルールはこう。

  • ✓入社6ヶ月継続勤務+出勤8割以上で、まず10日付与。以降1年ごとに増え、最大20日
  • ✓週の労働日数が少ないパートは日数に応じた比例付与
  • ✓年10日以上付与される人には、年5日を取得させる義務(取らせないと事業主の違反)

「うちは小さいから有給なんて」は通用しません。付与日と取得状況は、勤怠ツールで一緒に管理しておくと漏れません。

STEP 3:年に1回まとめてやること

年末調整
(11〜12月):1年の給与と源泉税を精算。従業員の税金の過不足を調整
労働保険の年度更新
(6〜7月):1年分の労働保険料を精算・申告
社会保険の算定基礎届
(7月・適用事業所):保険料の基礎を年1回見直す

「自分でやる」以外に、「外注する」選択肢

ここまで読んで「思ったより手続きが多い…」と感じたなら、それが普通です。そして——これ全部を自分でやる必要はありません。

手続きや毎月の給与計算は、給与計算代行サービスや社会保険労務士(社労士)に外注できます。特に、本業が忙しい・数字や書類が苦手・従業員が増えてきたなら、外注は「時間と安心を買う」合理的な投資です。私も、あの払いすぎ事故のあとで「最初から任せておけば…」と何度も思いました。

いきなり1社に決めず、複数の代行業者を比較してから選ぶと失敗しません。給与計算代行の一括比較・紹介サービスを使えば、条件に合う業者を無料でまとめて比べられます。

まとめ:雇用は「順番」と「仕組み化」で乗り切る

  • ✓雇う前:雇用/業務委託の線引き→労働条件通知書→最低賃金の確認
  • ✓届出:税務署→労働保険(1人でも必須)→雇用保険(週20h・31日)→社会保険(5人から)
  • ✓毎月:勤怠→給与→有給。勤怠と給与は自己流Excelをやめ、ツールに任せる(私の失敗の教訓)
  • ✓年1回:年末調整・労働保険の年度更新・算定基礎届
  • ✓不安なら給与計算代行・社労士に外注。時間と安心を買う

初めて人を雇うのは、事業が次の段階に進んだ証です。事務の重さにひるまず、順番どおりに一つずつ・仕組みに任せられるところは任せて進めれば大丈夫。私のように払いすぎで気まずい思いをしないよう、勤怠と給与だけは早めに”手計算からの卒業”をおすすめします。会社を辞めて独立した人向けの手続き全体像は退職後にやる手続き、開業まわりの全体像は開業ツール完全ガイドにもまとめています。

※本記事は2026年9月時点の一般的な制度にもとづく解説です。届出の期限・要件・対象範囲は制度改正や事業の実態により変わります。実際の手続きは、税務署・労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所や、社会保険労務士・税理士などの専門家に必ずご確認ください。

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開業から運営まで、順番にまとめています
この記事は個人事業主の開業・運営 完全ガイドの一部です。会計・契約・集客・雇用など、他のテーマもまとめて読めます。